コイン精米機で、おいしいつきたてのお米を食べる事ができる幸せが、この辺りでは普通のことです。
今日はコイン精米に行ってきました。
この小さな町に引っ越すとき、世話好きな不動産屋さんに農家さんを直接紹介していただいて、コンバイン袋に1俵ずつ、直接農家さんからモミの状態でお米を買う事が出来るようになりました。
引っ越すまでは、私、お米を精米機にかけた事なんてなくて、初めての時は夫と一緒におっかなびっくり精米しました。最近はやっと慣れて、一人で行けるようになりました。
自分でこまめに精米すると、やっぱりおいしいご飯が食べられます。モミの状態で保管すると鮮度が保たれるそうで、やっぱり精米したてがおいしいんだそうです。できるだけおいしく食べたいので、精米したてのお米をルクルーゼで炊いて、食べています。
そして、とぎ汁から乳酸菌を取り出して培養して、豆乳ヨーグルトを作ったり、お風呂や植物や掃除に使ったりしているのですが、鮮度がいいからか、菌の元気がいい!
それも、こちらに引っ越してきてから、豊かだなぁと感じることのうちの一つです。
紹介して頂いた農家さんに、2カ月に一回ほど、お米を配達してもらっています。
ほっぺが赤くて冗談が好きで、手足が長くてよく働く農家のおじさんが、いつものワークパンツにチェックのシャツを着て、軽トラで現れます。一度、田植えの頃の晴れ間にお願いした時は、田んぼの草取りがとても忙しい日だったらしく、「ゴメン、忘れちょったー!」と言いながら夕方遅くに来てくださいました。長袖で汗びっしょりのおじさんは、いつもよりちょっとお疲れで、言葉少なに帰って行きました。
自分が食べてるものを作っている人が、ほんとに汗をかいているんだ、って、当たり前だけど、まともに目にすると、ありがたさが分かるし、食べているお米にも命の循環を感じます。
そして、自分で少量ずつコイン精米機に持っていって精米しています。我が家の場合、モミで7~8kgを持っていくと、精米代100円で、だいたい5kgの白米になります。それで2週間ほど。
この間までは、近所のコインランドリーの裏にある、古いコイン精米機に通っていました。いつものように私が精米しようとモミを流し込んでいると、白い軽バンが近寄ってきて、「ありがとなー!」と。あぁこの精米機のオーナーさんか、と思って挨拶をし、精米しようとボタンを押しました。しかし、機械が故障してしまって動かず、ちょうどオーナーさんがいたからよかった、と鍵を自宅にとりに帰ったおじさんを、車の中で待ちました。
10分ほどして帰ってきたおじさん、機械を調整して無事、私のお米が出てきたわけですが、「あんたが最後なのよ」と言います。
なんでも、10年ほど前、近くにできたホームセンターの格安精米機に負けじと、ずっと値段を下げて続けてきたんだそうです。でも、その値段では、収支は赤字なんだそう。「電気代だけで7~8000円、まるまる赤字だもんなぁ」とおじさん。
そして言います。「これからは、アタマの時代なんじゃって」おじさん!おもしろい。何を言うかと思ったら、おじさんのかわいいお孫さんが、アタマの時代だから、公文に通いたいと言うようになったそう。でも、子ども世代にお金がないから、おじさんが公文のお金をだしてやりたい。それで奥さんから言われたのが、赤字を出してる精米機の電気代で出せる、案。「しょうがなかもんなぁ。またホームセンターが無くなったりいろいろしたら、またやりますから」おじさん、この辺りの集落への貢献の意味もあったのだろうし、名残惜しそうに言います。
この小さな町に引っ越してきて、半年ほど。間違っても「ずっと使ってきたこのへんの人」じゃないんだけど、最後のお客さんとして、「便利だったのに、少しぐらい高くてもここがよかったのに」と、お礼を言いました。
「ありがとう!ありがとう!ああーほんと、最後にお客さんに直接会えて、よかったー!」顔いっぱいで笑うおじさんに両手で手をにぎられて、私は一生懸命、みんなを代表する最後のお客さんをやりきったのでした。
それから2回目の精米。
素直に、そのホームセンターの格安精米機に通っています。
実際、おじさんのところよりも新しい機械で性能はよく、例えば最初に前回の人のお米がちょっと混ざったりとかしないし、キレイだし、駐車場も広い。
正直、いいかなぁと思うのは、こちらでした。
しかも、このホームセンターって、県内の資本で、経営も品ぞろえも独特な店。これまた応援したくなる感じなんです。
ありふれたヒトコマですが。
私、思うんです。この小さな町に引っ越してきて、水やお米や野菜や空気や人や、いろんなものが本当に豊かだなぁって。
所詮アウトサイダーな私が言えることって、無いんだよなぁとも思うんですが、ひとつだけ、大きな声で叫びたくなることが。
「ここは、とっても豊かなところだと思います!」
顔の分かる農家さんが汗を流している姿を見て、 その人から直接モミでお米を買って、つまり中間マージンなしに農家さんに直接代金を支払う事ができて、自分たちのペースで精米して、つきたてのお米を食べる。
都市部ではありえない幸せ。
引っ越してから半年以上たちますが、まだまだたくさん、「この辺りでは普通な、すごい幸せな事」を毎日のように発見して、感じています。
「ここは、とっても豊かなところだと思います!」
それを叫ぶこと、ほかにも何か出来る事はないかな、どういう風に参加していったらいいのかな、と、つきたてのお米のほんのりした温度を感じながら、思うのです。