大家さんの、「もったいない」。傷はあってもハリのある野菜たち。
今日も暑い一日。
夕方、玄関のチャイムが鳴りました。
今朝も、もう30℃超えた時間帯なのに、ほっかむりとかっぽうぎで完全防備して敷地の草とりをしていた、大家さんでした。もう70代半ば以上だと思うけど、いつもしゃきっとして、働き者で、ほんとうに元気。
草取りのときは、いつも小さなラジオを片手に、目にもとまらぬ速さで根こそぎ草をとっていきます。しかも、私が手伝った後にはまたすぐ草が生えてしまうのに、大家さんがとった後には、しばらくまったく草が生えてこないのです!
「傷が入ったりしてるんだけど、そんなのを若い人に悪いな、って思うんだけどね、うちでは食べきれんもんだから、やっぱり私らの年代だと、もったいないなーって思うもんだから」
と、確かに傷はあるけど、スーパーのお野菜より、パンッ!と実にハリがある、大家さんの畑で採れた、ナス、白ナス、トマトでした。
大感謝!
作った人が分かって、感謝の気持ちを伝えられて、その土地で同じ雨や太陽を浴びて成長したもので、採れたてで、これ以上いいものって、あるでしょうか???
この辺りの地域も、戦前には、農家ばかりで人口が多かったようです。
昔は、人手がたくさん必要な農業で、作物がとれれば、なんとか食べていくことはできたから、どこも子だくさんで、下の子をおぶったまま遊ぶ子どもたちや、手伝いする子どもたちの姿が多くみられたそう。
でも、ひとたび飢饉が訪れると、この地域でも無理心中があったり、厳しさと向き合って生きてきた人たちです。
それを知ったのは、この本。
ジェフリー・アイリッシュさんという、ハーバード、エール出身の、エリートアメリカ人が、里山に暮らし、日本の昔の暮らしの姿を本にしたものです。
幸せに暮らす集落―鹿児島県土喰(つちくれ)集落の人々と共に―
- 作者: ジェフリー・S・アイリッシュ
- 出版社/メーカー: 南方新社
- 発売日: 2013/01/21
- メディア: ?行本-平装
- 購入: 1人 クリック: 4回
- この商品を含むブログを見る
この本は、ジェフリーさんが、そのとき住みついた集落の暮らしを、いきいきとした写真とエッセイでつづったもの。
実はこの中で、私がショックを受けた部分があります。
いわゆる限界集落(お年寄りしかいない、存続が危うい集落)なので、ジェフリーさんが、あいている古民家に若い夫婦を新しい住民として迎え入れたい、と提案した時。
なんと、お年寄りたちは、知らないよその人たちが入ってくるより、今までの信頼と安全の中で、この集落を「終わらせて」いこう、と決断したのです。
よその人間には、何も口を出せないことだけど、私が持っているのと違う、集落への想いを感じました。同時に、さびしさも。
今日の夕方、傷はあってもハリのある、なんとも愛しい野菜を持ってきた大家さんの口から「もったいない」という言葉を聞いた時、そのことを思い出しました。