西千葉、ワンアンドオンリーな多国籍定食屋さん、「ポポキ」。
西千葉、ワンアンドオンリーな多国籍定食屋さん、「ポポキ」。
東京・千葉への旅日記、2日目の夜は、西千葉駅近くの不思議な定食屋さん、「ポポキ」へ。
0日目、羽田に到着。
1日目、新宿ベルクにてブランチ。
銀座周辺。
2日目、四谷周辺。
の、続きです。
夫が学生時代、毎日のようにお世話になった思い出の定食屋さんにいつか行こうね、という話が、結婚して10年近くかかり、とうとう叶いました。
学生街の思い出の定食屋さんなんて、まぁどこにでもありがちですが、このポポキというお店、夫に話を聞くと、なんだか妙に気になり、無性に行ってみたくなってしまうお店なのです。
- とにかく腹いっぱいで、ウマくて、毎日のように通っていた。
- メニューは、「肉ナスガーリック」とか「プルプルライス」とか「長葱ポーク」とか、微妙に国籍不明で不思議な感じ。
- でもとにかくどれもウマい。
- カウンターしかない狭い店で、昼飯どきには、席の真後ろにそれぞれ人が並ぶぐらいの混雑。
- ウンパルンパ似のオヤジと、働き者の奥さんがやっていて、バックパッカー夫婦?
- 学校が長期休みになると、お店も休みになって、ふたりで世界中を旅しているらしい?
- オヤジは主に味噌汁をよそう係で、働き者の奥さんが黙々と全部作っている(ように見えた)。
- 常連として認められると、オヤジが出してくれる割り箸が、ある日突然、塗り箸にランクアップ!
- 「そんなことじゃまともな大人にならんぞ!オレみたいになるな!」とオヤジに説教されたことがある。etc.
飲み屋ではないので、夜は20時には閉まってしまうのだそう。
この夜は夫と一緒に合流し、西千葉駅で降り、19時半ごろ到着。
十数年前に昼は全品500円、夜は600円だった!という話で、消費税だのなんだの値上げがあったからいくらになってるだろうと思ったら、なんと、お値段据え置きです!
夫、懐かしすぎる様子。
ギイと扉を開けて店に入ると、十席ほどの木のカウンター、その中にはオヤジ、奥の小さな調理場に、赤いエプロンをつけてフライパンを振る奥さん。
手前の席に、東南アジアの男子学生が2人ほど。
暖色系の明るい店内。だけどちょっと不思議な置物なんかがあちこちにあって、かかっている音楽は、ビッグバンドのレトロでコミカルなジャズ。
なんかチグハグなんだけど、まるでそれが正当ですよ、と言わんばかりに、なぜか調和している店内です。
残念ながら、ここから写真がないのです。
狭いので、入口右手の荷物置き場に手荷物は置くシステムになっているんだそう。
ついカメラを入れたまま、置いてしまいました。
通されたカウンター奥側の席の前には、何が泳いでいるか不明だけど、水槽。
店中の壁は、世界中の紙幣と、オヤジと奥さんが世界中を旅した写真が壁紙のように覆い尽くされ。
砂漠。海。大きな遺跡。草原。
南半球で不思議な動物を抱きかかえる奥さんの、若かりし頃の美しい笑顔の向こうには、写っていないけど、笑顔でシャッターを切っている若かりし日のオヤジがいるわけで。
十数年後、すっかりオトナになった夫には、当時の塗り箸でなく、割り箸が出てきました。
夫は、「肉ナスガーリック」。私は、「チキンソテー」をオーダー。
しばらくしたら、現役の男子学生がひとり、入ってきました。
「あぁいらっしゃい、田中くん。今日はずいぶんと早いね。出直してらっしゃい。笑」
当時の夫とオヤジのやり取りを再現しているかのような、今の学生とオヤジの会話。
塗り箸を出された田中君は、焼き鳥のりめし丼をオーダーしていました。
ポポキは基本、ワンプレートらしく。
かなり大き目の、給食で使ったような材質の丸皿に、レタス類や刻んだキャベツやニンジンなどのお野菜をたっぷり、ご飯の上には黒ゴマと梅干し、もやしのナムルまで添えてあって、メインがどどーんと盛られています。
ご飯、お野菜、ナムルまでオヤジが盛りつけ終わったところで、奥さんが奥の調理場から、フライパンごとジュージューいいながらメインを持ってきて、ドッキング。
アツアツのお味噌汁も出てきます。
とにかく大きな皿で、この体積が自分の胃の中に入るんだろうか?と一瞬不安になるのですが、色とりどりで、かなり栄養バランスが良いです!
一人暮らしの食べざかりの男子学生が、一日一回、500~600円でここのご飯を食べられるというのは、なんてありがたいことなんだろうと思いました。
学生時代の夫を支えてくれたんだなぁと、まずは感謝。
お味は…超ウマいです!!!
なんでしょう、何かが絶妙。
たくさん食べても、するすると抵抗なく入っていく。
例えばチェーン店のファミレスなんかでこの量が盛られていたら、途中でイヤになると思うのです。
均質化された味が連続して入ってくることによるしつこさや飽き、化学調味料の後味、油のぎっとり感。
途中から、体が受け付けなくなってしまうと思います。
端的に言うと、ポポキの定食は、それらを感じないで食べることができる、不思議なボリューム料理でした。
手作りだからこその、工業製品のように均質化されていない、ちょうどいいムラがあるから食べ飽きない家庭料理に近いおいしさ、おそらく化学調味料とか精製塩とかを多用していない、ヘンな角のない、気持ち悪さがない後味、油も使っているけど、大量消費店とはちがって酸化やギトギトを感じない、ごく普通の素直な油。
チキンソテーは、たとえば鶏の一枚肉が乗っているのではなくて、三角形にさらに切り目を入れたような形に切った鶏肉がゴロゴロとたくさん、なるほど、これなら火の通りが合理的。結果、短時間でもジューシーでぷるぷるに焼き上がっています。
仕上げの黒胡椒がアクセントになっていて、全体の味は濃すぎず、何かが、絶妙。
黒ゴマ(ゴマ塩?)がかけてあるご飯は、食感も楽しく風味もよく、何より栄養が豊か。
甘めのフレンチドレッシングがまたおいしくて、野菜もモリモリ、添えてあるナムルがまた良いリズムです。
まさか36歳にもなって、こんな大皿を平らげてしまうとは、私。
大量のお肉と野菜とご飯が、するすると胃の中に気持ちよくおさまりました。
「実は、学生時代お世話になって」
と、カミングアウト。
「間違ったらいけないから(黙ってました)…。」
と、オヤジさん。
夫の話を聞いて、ずっと行ってみたかったこと、とてもおいしいこと、感謝していることを伝えました。
帰り際、支払いしていると、奥さんがアメをふたつ、にぎらせてくれました。
なんだか、ほっこり。
店を出た夫、
「オヤジも奥さんも元気そうでよかったー。
でもやっぱり、年、とってたな。そりゃそっか、オレも年とってるもんね」
と。
卒業してから一度訪ねているそうですが、それでも、私と結婚してから10年近くぶり。
自分の学生時代歩いた町、学校、いろいろなものが怒涛のように目の前に現れて、感慨深そうでした。
独特なメニューも、何かが絶妙な味も、店全体の調和し具合も、オヤジさんも、奥さんも、世界中への秘密基地みたいな狭い店の中のちゃんぷるー具合は、ワンアンドオンリーな世界でした。
そこに流れるのは、腹いっぱい食べたい学生と、栄養バランスよく安く食べさせてやりたい、「立派な大人になれよ!(オレみたいになるな!)」というオヤジのハートの、なんだかあったかいハーモニー。
旅行の中で一食でも、こういうご飯を食べられると、回復具合が違います!
栄養だけでなく、何かいろいろと補給できたような感じ。
たった3泊でしたが、その中でポポキで一食、食べられたことが、後からかなり効いてきました。
お店がまだあるうちに、一生のうち一度でいいからポポキに行ってみたい、という願いがとうとう叶った、2日目の夜でした。
また機会があれば、他のメニューも食べに行ってみたいです!